伝統の本格藁床畳

畳というものは古来から稲藁(いなわら)で作られていました。
昭和のはじめ頃までは『脚踏み床』という手法で、千鳥状に糸で縫い締め、
脚で踏み固めた畳床が主流であり、畳は高価格品でした。
水害や浸水のときは、まずは畳を濡らさないようにする、現代のように、
そうそう気軽に買えるほど、安いものではなく、一般庶民の家では板の間にムシロをひいていた
というのもめずらしくなかったそうです。(NHKのおしんなんかでもそうですね。)

その後、電気動力が導入され、ベルトで動力伝達される製床機が開発され、
畳床の生産は全人力から機械化され、コストダウンされます。
僕の子供の頃にはうちの倉庫にも長大なベルトで動く製床機がありました。
畳の価格も下がり、一般家庭にも畳が敷き詰められ、それほど大切にされるものでは
なくなった気がします。あって当たり前の存在になったのですね。

藁床畳はその後、ウレタンフォームを挟んだスタイロ畳に移行します。
藁床はなくなりはしませんが、その重量から敬遠され、圧倒的に使用は減りました。

稲藁自体も稲作の減反や、品種が丈の短い台風に強い品種に変わることで
確保がしにくくなったり、また住宅自体の過剰な気密性向上のせいで
(無駄に気密性を上げた結果が…シックハウスなどの遠因でもあると思います。適度な
通気性は中で生活する人間がいる以上重要ではないかと思います。)
室内の湿気が畳に集中するなどの悪条件から藁床が使えないような家が増えてきました。
(壁はビニールクロス、床下は密閉パネル、窓は2重サッシで完全密閉。
これで湿気を出す動物、人間がいなければ最高の状態でしょうね。)

現代の畳は大半が木材チップを圧縮したインシュレーションボードで作られています。
畳表もイ草を使わない家も増えています。
過剰な気密性のつじつま合わせだと思いますよ。僕は。

昔の家は偉大だと思います。高温多湿な日本の環境と共存する形で建てられています。
現代ハウスメーカーの高気密住宅は…耐用年数は30年だそうで。
『30年住んだら建て替えてもらわないと。でないと住宅会社は食っていけないでしょうが』
家も自動車と同じになってきたという事でしょうかね。

長くなってしまいました。

Fさん邸は工期3年近くかけて、土壁、本物の材料にこだわって建築されました。
畳もめずらしいくらいの本物です。うれしい仕事でした。

本格和室8畳2間続きの座敷
畳表はJAやつしろ国産イ草ひのみどり最上級品。 畳縁は最上級麻縁黒無地。豪華箱入り。
床は播州播磨の本格藁床注文生産品。 昨今は上質な藁床を作れる職人さんが減ってしまい、むらのない藁床はなかなかないですねえ。(注文する事も少ないですが)
手加工 麻縁
高かったです。 手触りが違います。ナイロンとは。
播州藁床
緻密な藁の組み合わせと、細かい締め付け糸のピッチがむらの少ない藁床でありながら、
どこか、感触のやさしさを感じさせます。重量は1枚で50キロ以上あります。
敷き込みのあとは…腰痛になりました。
藁床の裏面は棕櫚貼りです。
通常品はビニールなどですがさすがにこれでしょ。イグサ貼りの『丹波』などもありますが、
あれは湿気を呼びやすいので。


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